2012-06-18

託されたもの



先週、懇意にさせて頂いていた色石の業者さんが活動拠点を海外に移すという連絡を貰い、出国前に急遽アポイントを取りつけました。香港出身の社長さんとは10年来のおつきあいで、カラーストーンの選別方法を教えて頂いたり、海外市場のリアルな情報を伺ったりと本当にお世話になっていただけに、このご決断はかなりショックです....


原石の段階で上質なものだけを買い付け、自社工場でカットするというスタイルだからこそ可能な、プロポーションの良いカラーストーン。社長さんの扱う色石は、輝きの美しさが一目瞭然なのです* けれどナチュラルカラーのサファイアやダイヤモンドカットを施したセミ・プレシャスストーンなどは一般的な市場価格よりどうしても割高になるため、なかなか需要がなく商売が難しいのだそう。確かに「バリュー感」か「素材の希少性」に二分化する今の国内ジュエリー業界では、"美しさ"を付加価値として提案する事が、シンプルゆえに難しくなっているのかも知れません。


次の帰国がいつになるのか未定の為、ちょっと早いのですが来年のコレクションに使いたいなと思っていた、とても魅力的なカット石をあるだけ購入させて頂きました。
あまりに綺麗なのでここでお見せしたいところですが.....来年のお楽しみということで、ワントーンのスナップで失礼いたします*







取引を始めた当時は、まず色合いを私が選び、次に社長さんにカットのクオリティを見てもらって良い石を選別するという方式をとっていましたが、次第に見よう見まねでカットも自分でチェックできるようになり、最近では色合いをとるか、全体のバランスを合わせるかで迷ったときにだけアドバイスを貰ってみたり。同時に海外の業者さんと取引する時のコツや、時にジュエリーに対する哲学も伺いながら、カラット数を増やした分価格の駆け引きも試みて、心地良い緊張感の伴う"石の取引"の醍醐味がようやく味わえるようになってきただけに...とても残念でなりません(;_;) が、ご縁はまたどこかでつながるもの。社長さんの新天地でのご成功を祈っております*


ルース(裸石)の状態でうっとりする程の色合いをもつこの石達。託されたこれらを活かして"美しいもの"が創り出せるかどうか....ここからは自分の領域ですから、頑張らねば!